先祖伝来の 土地をはなれて
2006年 11月 10日
秋のダムは、満面の水を湛えて美しく光っていた。
このダムの底に村が沈んでいるとはとても思えなかった。
村の風景や村の歴史が そのまま沈んでいるなんて。
わが家も
小学校も
郵便局も
駐在所も
村役場も
何もかもこのダムの底に。
ダムに貯められた水は
下流の都市に住む人々の飲料水になっている。
先祖伝来の土地を去って
村を立ち退いた人たちは
いまどうしているのか。
石川達三の小説「日蔭の村」は
ダムに沈む小河内村の人たちを描いた名作である。
何事もなかったような
無言の水面を見ていると
少し悲しい気持ちになった。
先祖伝来の土地を離れがたく
ダムに近い場所を見つけて
暮らしている農家があった。
by hanehenID | 2006-11-10 21:35 | 自然を 歩く